AI議事録作成では、文字起こし原稿を短く要約するだけでは不十分です。会議概要、決定事項、ToDo、担当者、期限、未決事項、確認事項を分け、根拠を確認できる状態で社内共有用の議事録へ整える必要があります。
この記事では、発言者分離済みの文字起こし原稿が手元にあることを前提に、入力準備からAIへの指示、議事録テンプレート、出力内容の確認、社内共有までを解説します。録音方法、文字起こしツールの選び方、特定サービスの比較や社内導入フローは扱いません。
先に結論を示すと、AIには「原稿にない情報を推測しない」「決定事項と未決事項を分ける」「根拠発言と確認要否を付ける」と指示し、出力後に人が原稿と照合する流れが実務向きです。
AI議事録作成は文字起こし後の整形に活用する
AI議事録作成の目的は、発言録を単に短くすることではありません。会議後に読み手が判断し、作業し、次回の確認につなげられる情報へ変換することです。
この記事で扱う対象は発言者分離済みの文字起こし原稿
対象は、誰の発言か分かる状態に整理されたテキストです。たとえば、次のような原稿を想定します。
田中:見積もりは来週までに作成します。 佐藤:価格改定は次回までに検討しましょう。 鈴木:現時点では現行価格で進めます。
この原稿から、会議概要、議題別の要約、決定事項、ToDo、担当者、期限、未決事項、確認事項を抽出します。
録音・会議ツール選び・社内導入を扱わない理由
録音方法や文字起こし機能、会議ツールの設定、特定サービスの料金・機能比較を知りたい場合は、この記事の対象外です。すでに文字起こし原稿がある状態から、共有用の議事録へ整える工程に焦点を当てています。
AI議事録作成で目指す成果物と抽出項目
最低限、次の項目を含む議事録を目指します。
- 会議名、日時、場所、参加者、目的、議題
- 議題ごとの議論の要約
- 決定事項と決定の条件
- ToDo、主担当者、期限、完了条件
- 未決事項と次に確認する内容
- 原文との照合が必要な確認事項
- 作成者、承認者、共有先
国土交通省の資料でも、開催日時・場所、出席者、懸案事項と対応内容などを記録し、懸案事項の管理につなげる構成が示されています。詳しくは国土交通省「議事録の作成と懸案事項管理シートの更新」を確認してください。
文字起こしから議事録へ変換する基本手順
文字起こし原稿をそのままAIへ渡すのではなく、会議情報を補足し、抽出と清書を分けて進めます。
入力する文字起こし原稿と会議情報を整理する

AIへ渡す前に、次の項目を確認します。
- 発言者名の表記を統一する
- 時刻情報がある場合は保持する
- 聞き取れない箇所を推測で補わず、判別不能と記す
- 社内略語や固有名詞を補足する
- 会議名、開催日、参加者、目的、議題を添える
- 出力する議事録の形式を指定する
誤認識された人名、社名、製品名、金額、日付などをAIが自然な文章に整える可能性があります。不明箇所を入力段階で明示しておくと、確認対象を追いやすくなります。
会議概要と発言内容を議事録向けに要約する
会議概要は、原稿外の情報を補わず、入力した会議情報だけで整理します。発言内容は、議題ごとに「議論」「提案」「懸念」「決定」を分けると、話し合いと合意事項が混ざりにくくなります。
たとえば「価格改定は次回までに検討」は未決事項です。一方、「現時点では現行価格で進める」は現時点の方針として記録します。両者をまとめて「価格改定が決定した」と書かないようにします。
決定事項・ToDo・未決事項を項目別に分ける
- 決定事項を抜き出す
- 作業が発生する発言をToDoに分ける
- 決まっていない論点を未決事項に分ける
- 担当者、期限、数値、固有名詞の根拠を付ける
- 判断できない内容を「要確認」として残す
正確性を確認したい場合は、最初から完成稿を求めるより、事実抽出と清書を分ける方法が適しています。
社内共有用のフォーマットに整形する
共有用の議事録は、次の順にすると必要な情報を探しやすくなります。
- 会議情報
- 概要
- 決定事項
- ToDo
- 未決事項
- 確認事項
- 承認・共有情報
ToDoは、議事録本文だけでなくタスク管理表へ転記できる粒度にします。ID、タスク、主担当、期限、状態、根拠、次回確認日を持たせる形式も選択肢です。
決定事項・ToDo・担当者・期限・未決事項を抜け漏れなく抽出する
議事録の価値は発言の量ではなく、何が決まり、誰が何を確認するかが分かることにあります。
決定事項は確定した内容と根拠が分かる形でまとめる
決定事項には、次の内容を分けて記載します。
- 何が決まったか
- 対象、条件、数値
- 関連する議題
- 決定の根拠
- 保留条件や適用範囲
「提案」「検討中」「合意」「決定」は意味が異なります。AIには、発言の表現を確定表現へ変えないよう指示してください。
ToDoは作業内容・担当者・期限を分けて記載する
ToDoは、具体的な作業、主担当者、期限、完了条件または成果物に分けます。説明用の仮想例では、「見積もりを作成|担当:田中さん|期限:来週まで」のように記載します。
担当者が複数いる場合は、最終責任を持つ主担当者と、協力者・関係部署を分けるとタスクへ移しやすくなります。
担当者や期限が明示されていない場合の扱い
原稿に「営業側で対応する」としかない場合、個人名を補いません。「担当:営業側・個人未定|期限:未定|確認事項:主担当と期限を決める」と記録します。
「おそらく営業担当」「来週頃」のような推測表現に変換せず、「未定」「要確認」として残してください。
未決事項と追加確認が必要な内容を残す
未決事項は削除せず、次の項目に分けて管理します。
- 論点
- 現在の状態
- 次に確認する内容
- 確認担当者
- 確認期限
未決事項を決定事項に混ぜると、次回会議で確認すべき内容が分からなくなります。
議事録整形AIに使えるプロンプトの作り方と例
プロンプトには、AIの役割だけでなく、入力範囲、抽出項目、不明点の扱い、出力形式、根拠の示し方を指定します。
プロンプトに指定する役割・入力範囲・出力項目
- 役割:議事録編集者
- 入力:発言者分離済みの文字起こし原稿と会議情報
- 抽出:概要、決定事項、ToDo、担当者、期限、未決事項、確認事項
- 制約:原稿にない情報を補完しない
- 出力:社内共有用の見出しと表
- 確認:根拠発言と確認要否を付ける
発言者分離済みテキストを議事録へ整えるプロンプト例
あなたは議事録の編集者です。 以下の会議情報と、発言者分離済みの文字起こし原稿だけを根拠に、社内共有用の議事録を作成してください。 【会議情報】 会議名: 開催日: 参加者: 目的: 議題: 社内用語: 【抽出項目】 ・会議概要 ・議題ごとの要約 ・決定事項 ・ToDo(作業、主担当、協力者、期限、完了条件) ・未決事項 ・追加確認事項 ・各項目の根拠となる発言 【ルール】 ・原稿に明示されていない担当者、期限、数値、決定事項を補完しない ・判断できない場合は「未定」または「要確認」と記載する ・提案、検討中、懸念、条件付きの方針、決定事項を区別する ・発言の否定、保留、条件を削除しない ・最後に、原文照合が必要な項目を列挙する 【文字起こし原稿】
不明な担当者や期限を推測させない指示
「推測しない」だけでなく、推測が起きやすい項目を指定します。たとえば「担当者・期限・金額・数量・日付・決定事項を補完しない」「根拠がない場合は未定・要確認とする」と明記してください。
出力後の確認事項まで含めたプロンプトへの追記
プロンプトの末尾に、次の確認指示を加えます。
出力後、次の確認対象を一覧化してください。 ・決定事項と根拠発言 ・ToDo、主担当、期限、完了条件 ・金額、数量、日付 ・人名、会社名、製品名 ・否定、保留、条件付き表現 ・未決事項と次回確認内容 ・原稿に根拠がない項目
根拠発言を付けると、完成稿を最初から読み直すのではなく、抽出項目ごとに原稿を確認できます。
抽出と清書を分ける二段階プロンプト

より慎重に確認したい場合は、次の二段階に分けます。
- 第1段階:決定事項、ToDo、未決事項、担当者、期限、根拠発言だけを抽出する
- 第2段階:第1段階の内容を、社内共有用テンプレートへ整形する
先に事実を取り出してから清書すると、自然な文章に整える過程で、提案や保留が決定事項へ変わるリスクを確認しやすくなります。
AI議事録テンプレートを会議の種類に合わせて使い分ける
共通項目を持たせたうえで、会議の目的に応じた欄を追加します。
社内会議向けの議事録テンプレート
【会議名・日時・参加者】 【目的・議題】 【議題ごとの要約】 【決定事項】 【社内ToDo】作業|主担当|協力者|期限|完了条件 【未決事項】論点|状態|次の確認|担当|期限 【確認事項】根拠発言と要確認箇所 【作成者・承認者・共有先】
営業商談向けの議事録テンプレート
【商談情報】 【顧客が明言した課題・要望】 【自社からの提案】 【顧客の懸念・保留】 【社内で確認が必要な点】 【次回アクション】作業|担当|期限|回答内容 【顧客発言の根拠】
顧客の発言、自社の提案、営業側の仮説を混同しないことがポイントです。説明用の仮想例では、「顧客:導入時期を短縮したい」「自社提案:導入支援プランを提示」「社内確認:短縮可能な導入スケジュール」のように分けます。
定例会議向けの議事録テンプレート
【会議情報】 【前回ToDoの進捗】完了・継続・遅延・保留 【今回の議題と要約】 【新しい決定事項】 【新規ToDo】 【継続する未決事項】 【次回までの確認内容】
定例会議では、前回からの継続ToDoを先頭に置き、状態を記録します。未完了項目は、次回の入力原稿やテンプレートへ引き継ぎます。
会議種別ごとの重点項目
次の表は、会議種別ごとに優先して抽出する項目だけを比較したものです。
| 会議種別 | 重点項目 | 整理のポイント |
|---|---|---|
| 社内会議 | 決定事項、社内ToDo、未決事項 | 担当と期限を分ける |
| 営業商談 | 顧客要望、提案、懸念、次回対応 | 顧客発言と自社提案を分ける |
| 定例会議 | 前回ToDo、継続課題 | 完了・継続・遅延・保留を記録する |
AIが作成した議事録を人が確認するポイント

AIの出力はそのまま共有せず、原稿の根拠を確認します。NISTは、生成AIが誤った内容を確信的に提示する現象をconfabulationとして整理しています。NIST「Artificial Intelligence Risk Management Framework: Generative AI Profile」も確認先になります。
決定事項が実際の合意内容と一致しているか確認する
「検討する」「可能性がある」「提案する」「合意した」「決定した」を照合します。条件付きの方針や保留が、確定事項へ変わっていないかを確認してください。
担当者・期限・数値・固有名詞の誤認を確認する
人名、会社名、製品名、金額、数量、日付、期限は、AI出力と原稿を突き合わせます。根拠が見つからない項目は、未定または要確認へ戻します。
発言のニュアンスや保留事項が変わっていないか確認する
否定、懸念、反対意見、条件、保留は、要約時に削除されやすい箇所です。短く整えた結果、発言者の意図が変わっていないか確認します。
抜けているToDoや確認事項がないか原稿と照合する
AI出力の各項目に原文の根拠を紐づけます。決定事項・ToDo・期限・担当者を確認した後、原稿側から見て出力にない作業や未決事項がないかを確認します。
整形した議事録を社内共有とタスク管理につなげる
議事録は共有して終わりではありません。決定事項の周知とToDoのフォローアップに使える形式へ整えます。
共有前に読み手に必要な情報へ絞り込む
全文の発言録をそのまま配布するのではなく、決定事項、担当作業、期限、未決事項を先に配置します。原文根拠や確認対象は、承認者が検証できる形で残します。
ToDoを担当者・期限単位でフォローアップできる形にする
タスク管理へ移す項目には、タスク、主担当、期限、状態、完了条件、関連する決定事項または根拠、次回確認日を持たせます。個人を特定できない場合は、主担当未定の確認タスクとして登録します。
次回会議で確認する未決事項を引き継ぐ
未決事項は、次回の議題や確認欄へ引き継ぎます。「何が未確定か」「誰が確認するか」「いつ確認するか」を残すと、同じ論点を整理し直す負担を抑えられます。
自社用テンプレートとプロンプトを更新して再利用する
共有後に発生した修正を、テンプレートとプロンプトへ反映します。固有名詞の誤認があれば社内用語欄を追加し、担当者の誤抽出があれば主担当・協力者・確認先を分離します。
個人情報、顧客情報、営業秘密、未公開情報を含む原稿を外部AIへ入力する場合は、サービスの利用規約、保存・削除設定、学習利用の有無、法人向け設定、社内規程を確認してください。個人情報保護委員会も、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しています。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」
AI利用時のリスク管理や人による監督については、経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」も確認先になります。
よくある質問
AIが整えた議事録はそのまま社内共有してもよいですか?
そのまま共有せず、決定事項、担当者、期限、数値、固有名詞、否定・保留表現、未決事項を原稿と照合してください。根拠がない項目は、未定または要確認として修正します。
文字起こし原稿に担当者や期限が書かれていない場合はどうしますか?
AIに推測させず、「担当者:未定」「期限:要確認」と記載します。確認先や、次回会議で決める内容も残してください。
AI議事録作成では、文字起こし原稿のすべてを要約すればよいですか?
全文を短くするだけでは不十分です。会議概要、決定事項、ToDo、担当者、期限、未決事項、確認事項を目的別に抽出し、共有・実行に必要な情報を残します。
営業商談と社内会議で議事録テンプレートは同じでよいですか?
共通項目は使えますが、追加欄は分けます。営業商談では顧客の要望、提案、懸念、次回対応を、社内会議では決定事項、社内ToDo、未決事項を記録します。
AI議事録用のプロンプトには何を指定すればよいですか?
発言者分離済みの原稿であること、抽出項目、出力形式、推測禁止、不明点の表記、根拠発言、確認対象を指定します。「原稿にない担当者・期限・数値・決定事項を補完しない」と明記することが重要です。
まとめ
AI議事録作成では、文字起こしを短くするのではなく、会議後に使う情報を構造化します。会議情報を補足し、決定事項・ToDo・未決事項を分け、担当者や期限を推測せずに記録してください。
- 発言者分離済みの原稿を整える
- 会議情報と社内用語を追加する
- 抽出用プロンプトで事実を整理する
- 会議種別のテンプレートへ清書する
- 根拠発言を確認してから共有する
- ToDoと未決事項を次回へ引き継ぐ
まずは一つの会議でテンプレートとプロンプトを試し、確認時に見つかった誤認や不足項目を自社用の形式へ反映してください。
